リボソームRNA配列に基づく3ドメイン説

下の系統樹は、Carl Woeses (1928 - 2012)が1987年に提唱した提唱した3ドメイン説に基づくものである。彼らは、すべての生物が持っている16s rRNA遺伝子の配列に着目して、世界で初めての定量的な系統樹を作成しました。これはrRNA遺伝子の解析が以前から進んでいたため可能でした(ゲノムプロジェクトが始まっていない時代の話なので驚きです)。これまでの系統樹は、解剖学的な特徴など主としてマクロな情報に基づいた分類法を用いて作成されていました。これに対して、Woesesらが用いた手法は、分子時計に基づいており、より定量性の高いものでした。

分子時計を用いた分子進化学的解析に16s rRNAが適していた理由がwikipediaに箇条書きしてあったので掲載します。


  1. リボソームという生物の本質に関わる機能を持ったRNAなので配列の保存性が高く、極めて関係の遠い生物同士でも配列の比較が可能である。
  2. 真核生物、原核生物問わずすべての種に存在し、機能変化に伴う遺伝子の変異がこれからも起きる可能性が極めて少ない。
  3. ゲノム内にコピーが複数個存在しても、塩基配列にほとんど差が無い。
  4. 遺伝子の長さが適当に長く(16S rRNAの場合、1600塩基対程度)、系統解析に十分な情報量を持つ。
  5. 比較的変異しやすい部位も存在し、近縁な種でも比較が可能である。
  6. 細胞内に大量に存在し、PCRの開発がなされる以前から塩基配列の比較が可能であった。
  7. 全生物にわたって完全に保存された部位が三箇所ほど存在し、そうしたプライマーユニバーサルプライマー)を設計することにより塩基配列の決定が容易である。
7項目とも納得できるものばかりです。実験の品質を保つ意味で、調査方法が規格化されているの良いことです。

Woeseの提唱した3ドメイン仮説は遺伝子変化速度は一定という前提があり、種々の問題があります。




【参考文献】
Wikipedia - Phylogenetics tree
http://en.wikipedia.org/wiki/Phylogenetic_tree

井出利憲「分子生物学講義中継 生物の多様性と進化の驚異」羊土社 2010 86 - 96pp

生物学

Wikipedia - 16s rRNA系統解析