フィッシャーの三原則

統計学の父であるフィシャー:Ronald A. Fisherは、農業試験の適切な実施のための方法論として実験計画法という学問分野を確立しました。
Fisherは局所管理、反復、無作為化の3つが大切であると述べています。これはフィッシャーの3原則と呼ばれ、農学以外の幅広い分野において利用されています。
以下に、肥料の種類による作物の生育具合の評価を目的とした農場試験を例に取って説明します。

1. 局所管理(小分け)の原則
実験計画の最も原始的な形態は以下のようなものです。複数水準の間の効果を比較したいのですが、同じ場所で異なる年度で調査を行おうとしています。これでは、年度ごとの気候の差が系統誤差として入ってきます。
そこで以下のように局所管理(小分け)すると、年度ごとの気候の差を調整することができます。


2. 繰り返し(反復)の原則
小分けをしただけではまだ問題が残ります。ある水準で生育がとても良かったときに、それが果たして偶然誤差によるものなのか、水準の違い(肥料の違い)によるものなのかがはっきりしません。この問題は水準ごとに実験を反復することで、解決することができます。同じ水準内で比較することにより、偶然誤差による差を調整することができるためです。

3. 無作為化の原則
2のように水準ごとに繰り返しを作ることで、偶然誤差と系統誤差(水準によるものとそうでないものを含む)に分解することが可能となりました。最後は、実験の割り付けを無作為化することが必要となります。2.のデザインでは、水はけは日当りなど、目的要因以外の要因が、一定の方向で偏りを持って実験結果に影響を与えている可能性が高くなるからです。つまり、水準以外の系統誤差が調整できていないのです。そこで、下の図のように無作為に実験を割り付けることにより、それらの系統誤差を調整することが可能となります。

以上、フィッシャーの3原則でした。
基本的な発想は、「目的となる要因以外からの影響が極力排除すること」です。肥料以外の要因は一定になるように努力するとともに、もしそれを制御しきれないのならば、せめて肥料以外の要因が実験結果に偏って現れないようにデータ収集することが大事なのです。

この発想は臨床試験や生物学実験においても大切な発想であると思います。


【参考文献】
栗原 伸一『入門統計学』Ohmsha, 2011, 88-89, 130-138pp